第3回FP講座「日本学生支援の奨学金制度」
(制作:安平町 監修:ファイナンシャル・プランナー星 洋子氏)
町では、特別企画「子育て世代応援プロジェクト」として、ファイナンシャル・プランナー 星 洋子氏によるWEB版FP講座を開始します。
前回は、教育資金計画の考え方についてでした。子どもの教育にかかる費用をどのように考えたらよいのか、教育資金を計画する時のポイント、国の制度などをご案内しました。
では何かの事情で進学までに、充分な準備ができなかった場合はどうしたらよいのでしょうか。その場合は奨学金や教育ローンを上手に利用しましょう。第3回目は、日本学生支援機構の奨学金のお話です。
奨学金は進学する本人(学生)が申込みます。教育ローンは原則、保護者が申込みます。以下、奨学金と教育ローンの違いをまとめます。
※1:日本学生支援機構の場合、卒業後7か月目から。
※2:日本学生支援機構の場合、お金を返済することを「返還」と表しますが、ここでは一般的な「返済」で表します。
上記のように、どちらもお金を借りる制度ではありますが、内容がまったく違います。
特に大事なポイントは「受取方法」と「受取時期」です。
前回の教育資金計画では、合格後の入学の手続き、つまり入学前にまとまったお金がかかるとご案内しました。入学金と前期の授業料などです。
ところが奨学金の受取時期は上記のとおり「入学後」です。それも「毎月振込」ですから、まとまったお金ではありません。ですから入学前にかかる費用は、奨学金では賄えません。(日本学生支援機構の奨学金には入学時特別増額がありますが、振込は入学後です。また関連してろうきんの融資制度がありますが要件があります。)
そのために入学前の費用は、ご家庭であらかじめ準備が必要であり、何かの事情で準備できないとなると、保護者等が教育ローンを利用することになります。
教育ローンは住宅ローンなどと同様に、どこの金融機関(銀行など)でも1年中扱っています。進学後に必要な資金(一般的には進学時1年間にかかる費用の合計)をまとめて受け取れるので、入学前の費用も賄えます。
奨学金と教育ローンの仕組みを踏まえ、一例として下記のような利用方法が考えられます。
①自宅通学の場合。入学前の大きな費用を教育ローンで賄い、入学後に毎月振り込まれる奨学金を半年分ごと貯めて、半年ごとに納付する授業料などに充てる。
②自宅外通学の場合。入学前の費用と1年間の授業料などを教育ローンで賄い、毎月振込の奨学金を毎月の生活費(家賃など)に充てる。
日本学生支援機構の奨学金は、以前は「育英会」という名称でした。昔からある奨学金制度です。「育英会」を利用して進学したという保護者もいらっしゃるでしょう。現在も学生の半数程度が利用していると言われています。
日本学生支援機構という名称に変わり、奨学金の内容もかなり変わりました。以前は「貸与型」のみでしたが、現在は「給付型」もあります。給付型については、2019年度からさらに内容の変更(高等教育の無償化)がありましたので、次回でご案内します。
奨学金の金額も第1種と第2種では異なります。第1種は、学校種別、国公立・私立別、自宅通学・自宅外通学別に上限額が決まっています。例えば、私立大学に自宅から通学の場合、月額最低2万円~最高5万4千円の中で選択します。
第2種は、2万円から12万円の間で希望の金額(1万円単位)を選択します。
詳細は、日本学生支援機構 金額
https://www.jasso.go.jp/shogakukin/seido/kingaku/1shu/2018ikou.html
第2種よりも第1種のほうが基準が厳しくなります。(低所得世帯は、第1種と第2種の学力基準は同程度)
また、第1種と第2種の両方を利用(併用)できますが、学力基準については第1種と同様の基準、家計基準は第1種よりも厳しくなります。
日本学生支援機構 採用基準
https://www.jasso.go.jp/shogakukin/seido/kijun/yoyaku/daigaku/1shu.html
返還は、借りた合計金額で返還年数が決まっていて、毎月定額で返還していきます。ボーナス併用も選択できます。また随時、繰り上げ返還も可能です。
日本学生支援機構 返還
https://www.jasso.go.jp/shogakukin/seido/henkan/kappu.html
また新制度として2017年から「所得連動返還方式」も導入されました。所得に応じた返還方式で、所得が少ない場合は返還月額も少なく、所得が多い場合は返還月額が多くなります。この方式ではボーナス併用はありません。
日本学生支援機構 所得連動返還方式
https://www.jasso.go.jp/shogakukin/seido/henkan/syotokurendo.html
まず申込時期です。日本学生支援機構に限らず、どの奨学金も申込時期が決まっています。時期を逃すと次回以降の申込となるので注意が必要です。
日本学生支援機構の場合、緊急・応急採用枠もありますが、一般的な申込は予約採用と在学採用です。
予約採用は高校3年生の時に申し込みをします。窓口は在学している高校です。予約採用を逃した場合などは、進学後に申し込みをします。在学採用といって窓口は進学先の学校です。
いずれも一般的には学校から申し込みについての案内がありますから、申込みしたいと考えている場合は気をつけましょう。
もう一つの注意点は返還についてです。日本学生支援機構の奨学金は、卒業後に働きながら返還することを前提とした制度であり、無理なく返還できる仕組みとされています。
しかしながら第2種は希望すれば月額で最高12万円借りられます。仮に12万円を4年間借りた場合、元金だけで約576万円。第2種は利息も合わせて返還しますから、元利合計600万円(返還時の金利が0.5%の場合)を越えます。
この例ですと卒業後20年間に亘って、毎月約2万5千円ずつ返還します。22歳で卒業したら42歳まで返還が続きます。
確かに独身の間は、就職して給料からコツコツと返していくことはそれほど困難ではないかもしれません。気をつけないといけないのが結婚して家庭を持った時です。子どもの誕生やマイホームの購入など、家庭のライフイベントが発生した途端に返還が大変になります。
特に夫婦それぞれが奨学金を利用していた場合や、妻の出産・育児などで一時的に収入が減った場合などに返還が重くのしかかってきます。
そのようなことにならないように、そもそも借りる金額は「足りない分だけを借りる」、「最後まで返せる額に合わせて借りる」ことです。さらに独身のうちに、返せるうちに、繰り上げ返済で返還していくことをお勧めします。
次回は「その他の奨学金制度と高等教育の無償化」についてです。
町では、特別企画「子育て世代応援プロジェクト」として、ファイナンシャル・プランナー 星 洋子氏によるWEB版FP講座を開始します。
前回は、教育資金計画の考え方についてでした。子どもの教育にかかる費用をどのように考えたらよいのか、教育資金を計画する時のポイント、国の制度などをご案内しました。
では何かの事情で進学までに、充分な準備ができなかった場合はどうしたらよいのでしょうか。その場合は奨学金や教育ローンを上手に利用しましょう。第3回目は、日本学生支援機構の奨学金のお話です。
奨学金と教育ローンの違い
どちらも一言で表すならば「進学するための借金」です。奨学金の中には「給付型(もらえる)」もありますが、この項では「貸与型(卒業後に返していく)」をご案内します。奨学金は進学する本人(学生)が申込みます。教育ローンは原則、保護者が申込みます。以下、奨学金と教育ローンの違いをまとめます。
貸与型奨学金 | 教育ローン | |
---|---|---|
申込者・お金の受取 | 本人(生徒・学生) | 保護者等 |
申込時期 | 募集時期あり | いつでも |
受取方法 | 毎月振込 | 一括振込 |
受取時期 | 入学後 | 融資決定後 |
返済(※2)する人 | 申込者 | 申込者 |
返済開始日 | 卒業後(※1) | 借入日の翌月以降 |
※2:日本学生支援機構の場合、お金を返済することを「返還」と表しますが、ここでは一般的な「返済」で表します。
上記のように、どちらもお金を借りる制度ではありますが、内容がまったく違います。
特に大事なポイントは「受取方法」と「受取時期」です。
前回の教育資金計画では、合格後の入学の手続き、つまり入学前にまとまったお金がかかるとご案内しました。入学金と前期の授業料などです。
ところが奨学金の受取時期は上記のとおり「入学後」です。それも「毎月振込」ですから、まとまったお金ではありません。ですから入学前にかかる費用は、奨学金では賄えません。(日本学生支援機構の奨学金には入学時特別増額がありますが、振込は入学後です。また関連してろうきんの融資制度がありますが要件があります。)
そのために入学前の費用は、ご家庭であらかじめ準備が必要であり、何かの事情で準備できないとなると、保護者等が教育ローンを利用することになります。
教育ローンは住宅ローンなどと同様に、どこの金融機関(銀行など)でも1年中扱っています。進学後に必要な資金(一般的には進学時1年間にかかる費用の合計)をまとめて受け取れるので、入学前の費用も賄えます。
奨学金と教育ローンの仕組みを踏まえ、一例として下記のような利用方法が考えられます。
①自宅通学の場合。入学前の大きな費用を教育ローンで賄い、入学後に毎月振り込まれる奨学金を半年分ごと貯めて、半年ごとに納付する授業料などに充てる。
②自宅外通学の場合。入学前の費用と1年間の授業料などを教育ローンで賄い、毎月振込の奨学金を毎月の生活費(家賃など)に充てる。
奨学金の種類
この回は、日本学生支援機構の奨学金のお話ですが、下表のとおり奨学金はいろいろなところで実施しています。次回、他の奨学金制度をご案内します。形態 | 備考 | |
---|---|---|
日本学生支援機構 | 貸与型・給付型 | 貸与型は無利子・有利子の両型 |
進学先の学校 | 給付型が多い | 入学金免除や授業料減免型もある |
自治体 | 貸与型・給付型 | 各自治体で形態などは異なる |
民間団体・企業など | 給付型が多い | 大々的に告知していないことが多い |
日本学生支援機構の奨学金
日本学生支援機構の奨学金は、以前は「育英会」という名称でした。昔からある奨学金制度です。「育英会」を利用して進学したという保護者もいらっしゃるでしょう。現在も学生の半数程度が利用していると言われています。
日本学生支援機構という名称に変わり、奨学金の内容もかなり変わりました。以前は「貸与型」のみでしたが、現在は「給付型」もあります。給付型については、2019年度からさらに内容の変更(高等教育の無償化)がありましたので、次回でご案内します。
貸与型の金額
貸与型は、無利子の「第1種奨学金」と、有利子の「第2種奨学金」の2つのタイプがあります。第1種奨学金は、卒業後に借りた分だけ返還していきますが、第2種は利子も含めて返還します。奨学金の金額も第1種と第2種では異なります。第1種は、学校種別、国公立・私立別、自宅通学・自宅外通学別に上限額が決まっています。例えば、私立大学に自宅から通学の場合、月額最低2万円~最高5万4千円の中で選択します。
第2種は、2万円から12万円の間で希望の金額(1万円単位)を選択します。
詳細は、日本学生支援機構 金額
https://www.jasso.go.jp/shogakukin/seido/kingaku/1shu/2018ikou.html
貸与型の採用基準
日本学生支援機構の奨学金を申し込む場合、2つの採用基準があります。生徒本人の学力基準と、保護者等の家計基準です。所得の高い家庭は利用できません。第2種よりも第1種のほうが基準が厳しくなります。(低所得世帯は、第1種と第2種の学力基準は同程度)
また、第1種と第2種の両方を利用(併用)できますが、学力基準については第1種と同様の基準、家計基準は第1種よりも厳しくなります。
日本学生支援機構 採用基準
https://www.jasso.go.jp/shogakukin/seido/kijun/yoyaku/daigaku/1shu.html
貸与型の返還
貸与型は卒業後7か月目から返還が始まります。例えば3月卒業の場合、その年の10月から銀行などからの引き落としで返還していきます。返還は、借りた合計金額で返還年数が決まっていて、毎月定額で返還していきます。ボーナス併用も選択できます。また随時、繰り上げ返還も可能です。
日本学生支援機構 返還
https://www.jasso.go.jp/shogakukin/seido/henkan/kappu.html
また新制度として2017年から「所得連動返還方式」も導入されました。所得に応じた返還方式で、所得が少ない場合は返還月額も少なく、所得が多い場合は返還月額が多くなります。この方式ではボーナス併用はありません。
日本学生支援機構 所得連動返還方式
https://www.jasso.go.jp/shogakukin/seido/henkan/syotokurendo.html
日本学生支援機構の奨学金「貸与型」のまとめ
最後にこの奨学金制度の注意点をまとめます。まず申込時期です。日本学生支援機構に限らず、どの奨学金も申込時期が決まっています。時期を逃すと次回以降の申込となるので注意が必要です。
日本学生支援機構の場合、緊急・応急採用枠もありますが、一般的な申込は予約採用と在学採用です。
予約採用は高校3年生の時に申し込みをします。窓口は在学している高校です。予約採用を逃した場合などは、進学後に申し込みをします。在学採用といって窓口は進学先の学校です。
いずれも一般的には学校から申し込みについての案内がありますから、申込みしたいと考えている場合は気をつけましょう。
もう一つの注意点は返還についてです。日本学生支援機構の奨学金は、卒業後に働きながら返還することを前提とした制度であり、無理なく返還できる仕組みとされています。
しかしながら第2種は希望すれば月額で最高12万円借りられます。仮に12万円を4年間借りた場合、元金だけで約576万円。第2種は利息も合わせて返還しますから、元利合計600万円(返還時の金利が0.5%の場合)を越えます。
この例ですと卒業後20年間に亘って、毎月約2万5千円ずつ返還します。22歳で卒業したら42歳まで返還が続きます。
確かに独身の間は、就職して給料からコツコツと返していくことはそれほど困難ではないかもしれません。気をつけないといけないのが結婚して家庭を持った時です。子どもの誕生やマイホームの購入など、家庭のライフイベントが発生した途端に返還が大変になります。
特に夫婦それぞれが奨学金を利用していた場合や、妻の出産・育児などで一時的に収入が減った場合などに返還が重くのしかかってきます。
そのようなことにならないように、そもそも借りる金額は「足りない分だけを借りる」、「最後まで返せる額に合わせて借りる」ことです。さらに独身のうちに、返せるうちに、繰り上げ返済で返還していくことをお勧めします。
次回は「その他の奨学金制度と高等教育の無償化」についてです。